ものづくりに欠かせない「変更箇所やチェック結果を伝える」プロセス
製造プロセスにおいては必ず設計の修正・変更が生じます。またプロセスごとにさまざまなチェック・検証が行われ、設計品質を高めるための工夫がなされます。
そのため、複数の人や部署、会社が協力してものづくりをする限り、変更箇所やチェック結果を伝える行為は必ず発生します。多くの企業が「設計変更連絡書」などの技術文書を作るのはそのためです。
把握することの難しさ
CADソフトウェアで作成された設計図を二つ並べどこに違いがあるかの確認をスピーディーに行い差異を漏れなく見つけたり、基準と照らし合わせてエラー箇所を検出したりすることは、設計した本人であっても難しいものです。
まず、変更箇所をすべて覚えておくのは常人には困難でしょう。さらにCADモデルの編集時には、設計者が意図しないところでいつの間にか形状が変わってしまうという難しさもそこに加わります。また、CADモデルの内側や小さなパーツまですべてを総ざらいし変化や不具合に気づくことは、人間の能力では不可能です。
例えば2D図面の変更点を探す場合には、現在も印刷した二つの図面を重ね合わせて透かして見ながら差異を探す方法がとられています。デジタルデータを用いて模擬的に図面を重ね合わせてチェックするツールを利用するケースもありますが、この方法では少しのずれでも差異として検出されてしまい、収拾がつかなくなることがあるようです。
伝える手間を解消する
3D CADデータの場合も同じような方法がとられますが、属性・PMI情報がびっしり付与されているデータの場合には、その文字・記号・数字の違いをすべて目視で見つけるのは不可能と言えます。また複雑で数も多い穴や突起などを一つ一つ検証し、不具合を見つけ出すのも困難です。
何とかすべての変更箇所やエラー箇所が把握できたとしても、それを他人に伝えるのにまた手間がかかります。
一般的には、変更点やエラー箇所を書き出し、見出しを付け、メモを書き込み、画面キャプチャーを撮って貼る作業を行います。いわゆる技術文書(設計変更連絡書)と呼ばれるものです。作業量が多く、思いのほか時間と手間がかかるのが実態で、本来は人手をかけなくするためのデジタルツールを使いながら、結局人手をかけなければならない、という問題に多くの企業が直面しています。
そこでエリジオンは、設計データの変更点やエラー箇所を見やすいかたちで人に伝えられる機能(3DxSUITE レポート作成機能)の開発にも取り組んでいます。
比較結果の表示
エリジオンは、CADデータの比較機能として2D図面用のDrawing Validatorと3D CADデータ用のCAD Validatorを提供しています。これらでデータを比較した結果は、3D PDFファイルやHTML形式のファイルとして出力することができます。
2D図面の比較結果レポート
3D CADデータの比較結果レポート
検証時のエラー箇所の表示
設計データの製造可能性を検証するDFM Studioによるチェック結果も、CADモデルの全体像やエラー箇所がズームされた画面などが自動キャプチャーされた文書で手軽に確認することができます。
設計者はもちろんのこと、データを受け取る後工程の担当者が苦労していた確認作業も大幅に手間が軽減され、双方が本来の創造的な仕事に集中できると好評です。
DFM studioの検証結果レポート
高精度な比較機能と文書作成が可能なわけ
なお、CADデータの比較精度を高めるには、CADベンダーが提供するAPIにアクセスし、設計データに含まれる内部情報にアクセスする必要があります。エリジオンは主要なCADベンダーとの正式なパートナーシップ契約を結び、常に最新の情報や技術を製品開発に生かしています。
また、技術文書に含める情報やそのレイアウトは会社ごとに求めるものが異なります。そのため、要望に合わせて設定を柔軟に変更できることもツールとしての大事な要素です。
重複した仕事はしない、本来のあるべき姿
目視に頼った設計変更やエラー箇所の確認方法では必ず人為的なミスや判断のぶれが生じるため、現在、プロセスごとで担当者が毎回チェックするのが一般的になっています。しかし、設計変更情報やエラー箇所は本来だれが確認しても結果は一つになるはずです。
したがって、プロセスの上流工程で抽出を完了させ、後工程でかかわる全員が同じ情報を共有できているのが本来あるべき姿と言えます。
見たい情報や見るべき項目はプロセスごとにウェイトが異なるため、用途に応じた見せ方の調整が必要ですが、それも一度設定が終われば、あとはプロセスごとに文書が自動生成される仕組みを実現することができます。
ものづくりの過程で必ず発生する設計変更やエラーの情報を後工程にスムーズに伝達することは、プロセス全体の効率化に大きく関わってきます。またベテラン人材のリタイアや人手不足という問題に対応するためにも、技術文書作成の効率化は、ものづくりDXによるイノベーションを考える上で重要なテーマと言えます。