要約

  • 取引先への3Dモデル提供時の機密情報保護のため、数千点に及ぶ内部パーツを手作業で削除。モデルによっては丸1日を要していた
  • 3D-SUITEの形状簡略化機能とSmartLauncherを活用し、iCADモデルの内部形状を自動で削除できる仕組みを構築
  • 従来1日かかっていた作業を約10分に短縮。作業者による品質のばらつきを抑えながら、確実な機密情報保護と設計者の負担軽減を実現

ジェイテクトマシンシステムは、研削盤をはじめとする工作機械や精密機器、FAシステム等の設計・製造・販売を行う企業です。自社製品に関する機密情報の保護を目的として、取引先へのCADモデル提供の際に、製品の内部パーツを削除したデータを自動で作成できる仕組みを導入しました。

顧客のレイアウト検討用に製品モデルを提供

「当社が開発する製品は比較的シンプルな形状ですが、大型設備が多いため、『工場内に問題なく搬入できるか』『予定したレイアウトで設置できるか』は、お客様が特に気にされる点です。商談を経て受注に至った後でも、最終確認のために製品の形状や寸法に関する情報の提供を求められることが少なくありません」
「特に海外のお客様からのそうしたご要望が増えていると感じています。物理的な距離があるお客様ほど、設備導入時の手戻りは大きな追加コストにつながるため、事前検討をより慎重に行われる傾向があるかもしれません。レイアウト検討に活用するデータとして、近年は製品の3Dモデルを求められるケースが増えています」

全社の3Dデータ活用を主導する技術開発センター設計部部長・武井淳氏

数千パーツの削除作業が現場の負担に

「お客様が安心して当社の製品を導入できるよう、最適なかたちで3Dモデルを提供したいと考えていました。ただし、CADモデルをそのまま提供するわけにはいきません。3Dモデルには製品に関する詳細な情報が含まれており、内部構造まで開示してしまうと、万が一の場合に第三者に模倣されてしまうリスクがあるからです」

ジェイテクトマシンシステムが開発する製品

「一方で、お客様も詳細なモデルを必要としているわけではありません。レイアウト検討が目的であれば、軽量化されたシンプルなモデルの方が扱いやすいケースも少なくありません。そこで従来は、目視と手作業でCADモデルを簡略化していました。数千点に及ぶパーツを削除する作業には、丸1日を要していました」

「作業には設計CADソフトのiCADを使用していましたが、単純に部品を削除するだけでは済みません。削除した箇所によっては外形まで欠けてしまうため、面を作り直したり形状を修正したりする必要があります。場合によっては、新たなモデルを作り直すのに近い工数がかかることもありました」

「こうした作業負荷に加え、『機密情報を漏らしてはならない』というプレッシャーも担当者の大きな負担になっていたと思います」

iCADを活用した設計の様子

CADモデルを「中抜き」できるソフトを探す

「内部形状を削除する作業は必要不可欠ですが、直接的な価値を生む仕事ではありません。作業負荷も大きく、設計者が本来注力すべき製品の強度向上や性能改善といった仕事に時間を割けなくなっていると感じました。そこで、CADモデルを『中抜き』できるソフトを探そうと。それ以前にも取引のあったITベンダーへ機能開発を相談したこともありましたが、実現には至っていませんでした」

設計ソフトの刷新や新規ツールの導入を進めた技術開発センター設計部のメンバー

1日かかっていたCADモデル簡略化を10分に短縮

「もともと3D-SUITE変換機能を利用していたこともあり、『モデルの中抜きにも対応できるのではないか』と考え、エリジオンのWebサイトを調べました。そこで、3D-SUITEに形状簡略化機能を追加できることを知り、さっそく導入を決めました」

「運用にあたっては、できるだけシンプルな操作で利用できるようSmartLauncherを活用しています。iCADで作成したファイルを右クリックし、メニューから3D-SUITEの形状簡略化を実行するだけです。容量の小さいファイルであれば数分、複雑なファイルでも10分程度で、可視面のみを残したiCADファイルが生成されます。従来は丸1日かかっていた作業が、今では10分ほどで完了し、担当者は結果を待つだけで済むようになりました」

「今後、iCADを活用した設計がさらに増えていく中で、誰が作業しても確実に機密情報を保護できること、そして成果物の品質にばらつきが生じないことが会社として重要になります。その意味でも、3D-SUITEによってこの作業を自動化できた意義は大きいと感じています」

3D-SUITEによるCADモデル簡略化の作業イメージ

3Dデータの全社活用で設計者の負担を軽減

「当社では2年ほど前から、全社で3Dデータを活用していこうという機運が高まっています。取引先からもデジタル化の一環として3Dデータの活用を求められるケースが増えているほか、新しく入社する社員の多くは学生時代から3D CADに触れており、2D図面に馴染みがありません」

「これまでも、設計者以外の社員が図面を十分に読み取れないため、組立工程などの現場から『この部品はどこに使うのか』『部品の大きさが違うのは意図したものなのか』といった問い合わせが設計部門に数多く寄せられていました。そのたびに設計者が対応する必要があり、大きな負担になっていました」

「今の外部環境に適応しつつ、実際に設計現場が抱える課題を解決していくためには、設計部門だけでなく、誰もが3Dデータを参照できる環境を整え、必要な情報を自ら取得できるようにすることが重要だと考えました。現在は設計データ共有ツールも導入し、全社員がCADモデルを閲覧できる環境が整いつつあります」

3Dモデルを営業活動にも活用

「今後3Dソフトやデータの活用がさらに本格化し、各製品の3Dデータが整った後は、形状簡略化したモデルを営業部門にも活用してもらいたいと考えています。あらかじめ機密情報を含まない3Dモデルを用意しておけば、お客様からお問い合わせをいただいた際や商談の途中でも、必要なデータを迅速に提供できるようになります。その結果、お客様とのコミュニケーションがよりスムーズになると期待しています」

「お客様が設備導入の検討を進めやすくなることで、信頼関係の構築や提案活動のスピード向上にもつながると考えています。技術開発センターとしては、設計部門の業務効率化にとどまらず、お客様満足度の向上や受注までのリードタイム短縮など、事業拡大への貢献にもつなげていきたいと考えています」

ジェイテクトマシンシステム本社(大阪府八尾市)