キャムは栃木県に本社を構え、自動車・カメラ・情報機器・事務機器などさまざまな分野のプラスチック部品を、金型の設計製作から手掛けているエンジニアリングプラスチック製造販売会社です。中国やASEAN地域にも拠点を有しグローバルに事業を展開しています。

会社方針として「究極の成形技術」を掲げており、その実現には、金型の設計製作においても高いレベルでのQCD(品質・コスト・納期)を同時に達成する必要がありました。その弊害となっていた、設計時のCADデータ授受に伴う課題を解決するためCADdoctor(現・3DxSUITE)を導入しました。

CAD-CAM間でのデータ不具合

キャムでは、異種CAD-CAM間における3Dデータの互換性について長年問題を抱えていました。

「当社はCAD/CAMソフトとしてNTTデータエンジニアリングシステムズのSpace-Eを採用しています。また加工側では必要に応じてC&GシステムズのCAM-TOOLをCAMソフトとして利用しています。CADdoctorの導入前は設計者が作成した3Dデータ自体の品質が悪かったり、3Dデータの変換ツールの性能に問題があったりしたため、Space-EのデータをCAM-TOOLに入力しても加工パスが生成されないといったエラーが発生していました」(技術本部設計部 舟橋巧海氏)

ACIS(SAT)からSTEPやParasolidへ

こうしたエラーが発生した場合にはその都度CAM-TOOL上でデータ修正を行わなければならず、開発計画に対して遅れが生じることがしばしば起こっていました。

そこでキャムはCADdoctorを導入し、Space-Eから出力したACIS(SAT)形式のデータをSTEP形式やParasolid形式のデータに変換し、CAM-TOOLに受け渡す工程を設計プロセスに加えました。

「CADdoctorでのデータ変換を行うことで人力での修正作業が減り、従来の3分の1の時間でCAM-TOOLにデータを受け渡せるようになりました。また、Space-E上でエラーが残ってしまったデータについても変換の前にCADdoctorで自動修正と一部対話修正を行うことで、CAM-TOOLへのデータ授受にかかる時間を半減させることができました」(舟橋氏)

PDQ(Product Data Quality)検証と自動修正も期待通りに

「CADdoctorは単にデータを他の形式に変換してくれるだけではなく設計者も気づかないようなデータの不具合を検出してくれます。これまでは不具合箇所を見つけることに設計者が長い時間をかけなければなりませんでしたが今はそれがなくなりました。さらに検出された不具合の多くは自動修正してくれますが、その際面が不自然にゆがんだり曲線の半径が変更されたりすることがなく、その修正の精度にも大変満足しています」(舟橋氏)

CADdoctorを社内標準へ

一部署での改善で手応えを得たキャムは将来的にすべての金型設計時にCADdoctorでのデータ品質検証・修正・変換のフローを導入することを検討しています。

「設計者が無駄なデータ修正作業をする時間が減り、本来あるべき創造的な仕事に打ち込めるようになったこともCADdoctorを導入した効果の一つと感じています。今回主にCAD-CAMソフト間でのデータ授受を効率化しましたが、今後は形状が複雑な製品に対しては、お客さまのデータをCADdoctorで検証・修正してからSpace-Eで金型設計を行うといった、設計の前工程での問題解決を全社で行っていきたいと考えています。そうした効率化を図ることができれば当社が目指す『究極の成形技術』の確立にまた一歩近づけると確信しています」(舟橋氏)