図面チェックの難しさ
個人に依存するチェックの質と時間
ものづくりにおいていかに設計変更を迅速に行えるかは競争力に関わる重要な要素の一つと言えます。プリンターや家庭用ミシンなどコンシューマ向け製品から燃料電池などのビジネス用途の製品まで幅広いラインアップを持つブラザー工業でも、設計者が理想の形状・機能を追い求め日々設計データの更新を行っています。
設計変更の際に必ず必要となるのが図面のセルフチェックです。チェックする項目は大きく二つに分けられます。
- 意図した変更が反映されているか
- 意図しない変更が紛れていないか
このセルフチェックは個人の経験やスキルによるところが大きく、特に若手が熟練者同様に行うのは難しいのが実情です。そのためチェック完了まで長い時間がかかる上、人力では一定の割合で必ずチェック漏れが発生します。
新たな検図ツールのリサーチ
こうした課題を解決するためブラザー工業では図面の比較ツールを以前から導入していました。しかしわずかな配置の移動まですべて差異として検出されてしまい、肝心の設計意図に関係する重要な変更部分が分からない問題があり導入効果は限定的でした。こうした問題は、ツールが画像比較技術をベースとしていることが主な要因です。
ブラザー工業がその後出会ったのが、3D CADデータから多様な情報を抽出しそれらを比較するエリジオンのDrawing Validatorでした。
「『意味のある差異』のみを検出対象とすることができるという点に課題解決の糸口を見出しました」(ブラザー工業 Drawing Validator導入担当)
Drawing Validatorへの期待
セルフチェック工数を87%削減へ
Drawing Validatorを新たな図面チェックツールとして採用するに当たり、過去の実績を元に導入効果を試算したところ、チェック工数を平均して約87%削減できるという結果が得られました。また目視や人の判断によるチェック漏れがなくなることで後工程での問題発生を防止することも期待できます。
さらにセルフチェック時に利用した図面比較レポートをそのまま添付して後工程に変更の通知をすれば、変更した箇所を分かりやすく正確に伝えることも可能です。
作業時間の短縮やコミュニケーションの改善により、限られたリソースをよりクリエイティブな業務に充てられたり、製品開発のリードタイムそのものを短縮したりする効果も見込まれたため、ブラザー工業は2018年10月、Drawing Validatorを正式に導入しました。
導入後のユーザーの声
一気に海外まで展開
ブラザー工業は当初からDrawing Validatorを日本国内にとどめず、海外拠点でも利用できる体制を検討していました。
「エリジオンはグローバルにソフトを活用したいという我々のリクエストに応えて迅速に対応してくれました。また導入後に必要と感じた機能がバージョンアップ時に追加されるなどユーザーの声を取り入れてくれる部分も満足しています」(同上)
設計者からの高評価
実際のユーザーからの反響も良好です。
「出図前のチェックに使っているが便利」
「変更点を分かりやすく、抜け漏れなく確認できる」
「後工程に変更箇所を簡単かつ正確に伝えられる。とても良いツール」
セルフチェックを行う設計者へのツール展開に続き、2019年3月には図面変更通知時に図面比較レポートを添付する運用も開始されました。
「設計変更後の工数や情報伝達の不備に不安を持つことなく、設計者がこれまで以上に積極的にアイデアを設計データに反映させられるようになることで、革新的な製品開発につながることも期待しています」(同上)