点群を切り分けて意味を持たせる

広い範囲を3Dレーザースキャナーで計測した点群データは、何億もの点からなる巨大な3Dデータです。一点一点が色の付いた状態でしかるべき場所に配置されることで、現実世界を高い精度で再現します。

点群は空間上にたくさん点がただ集まっているだけと言えますが、人が見れば、その形状が何を表しているかすぐに判別できます。さらに「ここからここまでが設備」「ここは躯体」といった具合に、意味のあるかたまりとして点群を頭の中で切り分けていくことができます。

エリジオンは、人が直感的に行っているこうした点の切り分け作業をソフトウェアが自動的に行う技術を開発しました。2025年5月にリリースするInfiPointsの新版に搭載します。

仕分けした点の便利な使い方

点を仕分けし意味のあるかたまりに分けることで、点群データをより有効に活用できるようになります。

例えば、生産現場を計測した点群データの中からある設備の部分を切り分け、一つのレイヤーに登録すれば、そのレイヤーを非表示にするだけであたかもその設備を撤去したような状態を再現することができます。

ほかにも、公園を計測したデータの中から大きな木の部分をレイヤーに分け、非表示にすれば、その木を切った場合の景観をすぐに確認できます。

シミュレーションソフトによる解析に必要なポリゴンモデルを点群から作成する際にも、点の仕分け作業が必要です。InfiPointsには、レイヤーに登録された点群だけを対象としてポリゴンデータに変換する機能が搭載されています。点群データ全体をポリゴンに変換すると不必要なデータ処理に長い時間を要しますが、変換する箇所を特定のレイヤーに限定することで、シミュレーションに必要な3Dモデルを短時間で用意することができます。

点群を自動仕分けする新機能

InfiPointsにはもともと、ユーザーがマウスを操作しながら点の範囲を指定し、任意のレイヤー番号に登録する機能が搭載されています。ユーザー自身で範囲を細かく決められるため、点の仕分け作業を正確に進めることができますが、お客様からは、この仕分け作業の手間と時間を削減したいとの要望をいただいていました。

InfiPointsの新版に搭載する新機能「セグメンテーション機能」は、まさにそうした声にお応えするものです。点群の中の一つ一つの設備や柱、床面などを認識し、それらを各レイヤーに登録する処理を、自動で行います。

セグメンテーション機能の活用手順

1クリックで点群を自動仕分け

新たに搭載する自動セグメンテーションの活用方法を、配管、ポンプ、設備などが多数存在する、以下のような大型の焼却施設の点群データを使ってご紹介します。

点の仕分け操作はシンプルです。メニューの「セグメンテーション」ボタンを押せば、仕分けされた点が各レイヤーに登録され、色分けして表示されます。

例えば、撤去予定の設備の施工後の様子を見たい場合には、当該設備が登録されたレイヤーのチェックを外し非表示にするだけで、すぐに現場の未来の状況を確認することができます。

解析用の3Dモデルを出力(ポリゴン化→テクスチャー貼り付け→出力)

次に、特定の設備について、点群からポリゴンに変換する事例をご紹介します。ここでは以下のような円筒形の設備を対象とします。

一般的に、現場に設置された設備の3Dモデルを作る場合、写真や寸法を記したメモを見ながら一からモデリングする必要があります。もし現場の点群データがあったとしても、点群を下絵にしながらやはり一からモデリングすることがほとんどです。

InfiPointsで当該設備がレイヤー分けされていれば、ボタン一つでそのレイヤー内の点群をもとにポリゴンデータに変換することができます。

以下が実際に自動でポリゴン化された当該設備のデータです。

ポリゴンデータははじめ単色で表されます。シミュレーションに利用するときこのままでも機能的には問題ありませんが、見る人にとってより直感的にこれが何であるか判別できることが求められるシーンもあります。

その場合には、InfiPointsの別の新機能「ポリゴンへのテクスチャー貼り付け」が便利です。

以下は一見点群データに見えますが、実はポリゴンの上に、点の色をもとにしたテクスチャーが貼られたデータです。リアルな見た目ながら、シミュレーションソフトで扱われやすい軽量なデータとしてInfiPointsから出力することができます。

作成した設備の3DモデルはInfiPointsの衝突判定機能にも利用でき、設備の搬入出シミュレーションをInfiPoints上で行うことができます。

独自アルゴリズムの発展に向けて

今回開発した点群仕分けの自動化機能は、エリジオン独自のアルゴリズムに基づいて実現されています。以前から、点群データを用いて平面や円柱を認識するInfiPointsの形状処理技術には高い評価をいただいていましたが、今回の開発では、エリジオンが創業以来積み重ねてきた3Dデータに関する知見や経験と、新たに考案したアイデアを融合させています。

開発には数年を要し、担当者が「自分の周りがすべて点群に見える」と感じるほど注力してきました。しかし、まだ精度や使い勝手には改善の余地が多く残っています。今後は、エリジオンならではの独自アルゴリズムにAIを駆使したデータ処理を組み合わせるなどして、点群から新たな価値を生み出す機能へと進化させていきたいと考えています。

セグメンテーション機能を動画で

本記事では、2025年5月にリリース予定の新機能「セグメンテーション」の利用方法をご紹介しました。一連の操作については以下のデモ動画を合わせてご確認ください。