株式会社エリジオン(本社:静岡県浜松市、代表取締役社長:小寺敏正)は、企業の3次元データ変換と最適化におけるトータルソリューション「ASFALIS」の新バージョン「ASFALIS EX6.0」を、2014年5月13日から販売いたします。
ASFALISは、プロダクトライフサイクルに係るすべての部門をつなぐマルチCAxのトータルソリューションです。異なるCAD・CAM・CAEツール間でのデータ変換はもちろん、後工程の用途に合わせた形状の最適化やデータに含まれる属性・アセンブリ情報の編集などを自動で行うことができます。データ変換や最適化などの機能を持つASFALISの各コンポーネントを自由に組み合わせることにより、企業組織やプロセスに応じた柔軟な3次元データの変換・流通システムを構築することが可能となります。ASFALISは、自動化によるオペレーターの負荷軽減とデータ処理にかかる時間の短縮により、デザイン・設計から生産までの業務効率の向上に貢献します。
異なるCAD・CAM・CAE間でのデータ変換を適切に行うためには、属性・レイヤ・アセンブリ構造などのあらゆる情報を正確に受け渡しすることに加え、それらの情報を後工程の用途に合わせて最適化することが求められます。こうした最適化処理の内容は、各企業が定めた運用ルールに依存するため、既製品のトランスレーターを使用するだけでは実現が困難でした。
新バージョンの「ASFALIS EX6.0」では、ユーザー自身によるデータ処理の内容やフロー設定における自由度を大幅に拡張しました。これにより、企業や部署、製品ごとに異なる複雑な要件にユーザーが柔軟に対応できるようになります。
また、ASFALISの基本機能の一つである、設計変更前後の3次元データを比較し自動で差異を検出・表示する機能を強化しました。ユーザーが比較後のデータに注記や寸法を追加したり、差異のあった箇所一つひとつに確認した内容をコメントとして入力できるようにしたりするなど、データを介したコミュニケーションの円滑化を可能にしました。さらに、基本機能であるデータ変換の処理速度を最大で約2倍にまで高速化するなど、パフォーマンスを大幅に向上させました。
ASFALIS EX6.0新機能概要
1. ユーザー自身による細かなカスタマイズを可能にした「ENF Editor」の新開発
製造業を中心とする各社では3次元データの有効活用の仕組みや体制が整備され、不具合のない質の高い3次元データを後工程に引き継ぐことは最低限の要件となりました。近年では、変換時にアセンブリ構造を変更したり、特定の要素を別のレイヤにまとめたり、属性情報を編集したりするなど、最適化したデータを後工程に引き渡したいというニーズが高まっています。
変換過程での処理方法に関する設定は、これまでのASFALISでもパラメーターを入力することで選択できましたが、パラメーターで指定することのできる処理内容は、例えば、「非表示要素を変換する/しない」「単独点・単独曲線を変換する/しない」「レイヤ番号が○○番の要素のみ変換する」など限定的でした。ASFALIS EX6.0では、アセンブリ構造・色・レイヤ・属性・各種PMI(Product Manufacturing Information)などに対し、どのようなデータ処理を実施するかをきめ細かく設定することができる機能を新たに開発し、ユーザーが必要とする固有の要件に柔軟に対応できる環境を提供します。
具体的には、ユーザーがプログラミング言語(Ruby)で処理内容をスクリプトとして記述し、そのスクリプトに沿ったデータ処理を行うことのできる新製品「ENF Editor」を提供します。スクリプトでは変換処理の内容を自由自在に記述することができるため、従来のパラメーター設定とは異なり、変換処理内容を詳細まで指定することができます。ENF Editorを活用することでユーザーは過不足のないより最適化されたデータを自動で作成することができ、関係者間でのデータ共有の効率化が実現されるほか、変換のノウハウをスクリプトとして社内に蓄積していくことが可能となります。
Rubyでのプログラミングについては、「Elysium Custom Service」(有償)を利用いただくことで、エリジオンが適切なスクリプト作成をサポートします。
■ENF Editor活用例 1 ― 3次元データに付与された属性情報の自動編集
3次元データに付与される属性情報は、多くの場合、企業や部署によって用語やルールが独自に規定されています。
ENF Editorを活用することで、例えば、自社で付与したパート名、パーツ番号、材料名、マッピングなどの属性情報を、他社の規定に合わせて自動一括編集を実施するようにプログラムすることが可能です。
■ENF Editor活用例 2 ― 加工情報に応じた形状色の変更
製品の加工に関する情報(公差や加工方法)を3次元データにどのように持たせるかは、各企業や部署によってさまざまです。例えば、フェースの色で識別する企業もあれば、フェースに属性を付与しその属性で管理する企業もあります。このように、運用ルールが異なる企業間でデータを授受する場合にENF Editorを活用すれば、フェースの属性に応じて、そのフェース色を置き換えるといった処理を自動で行うことができます。
■ENF Editor活用例 3 ― 体積の大きさをもとにした要素のグループ分け
一般的に、製品のアセンブリデータには数多くの要素が含まれていますが、利便性を向上させるために、アセンブリに含まれる要素を特徴によってレイヤ分けし、CAD上ではレイヤ単位で扱うことがあります。要素をレイヤ分けする際の条件はアセンブリデータの用途によって異なりますが、ENF Editorであればさまざまなレイヤ分けの条件を柔軟に定義することができます。例えば、解析目的でアセンブリデータを使用する際には、解析に影響のない体積の小さな要素を特定レイヤに分類することがあります。こうした場合に、ENF Editorを活用すればENFに含まれる各要素の体積値をもとに、体積が任意の値より少ない要素を特定のレイヤにまとめるなどの処理を自動で行うことができます。
2. 2つのデータの「形状比較」における視認性とコミュニケーション機能の強化
製品の製造過程においては、前工程で発生した設計変更の情報をもれなく効果的に後工程に引き継ぐことで、無駄な工数を削減し効率的な製造プロセスを構築することが可能となります。
ASFALIS EX6.0では、設計変更前後の2つのモデルを比較した結果を表示するツールとして、新たに「Diff-Viewer」を開発しました。表示パフォーマンスを最大限に引き出す新たなフレームワークを採用することにより、数ギガバイトレベルの大規模なアセンブリデータの比較結果であっても、モデルの回転や平行移動、拡大縮小といったビューイング操作でユーザーがストレスを感じることなく、スムーズに閲覧することができます。
また、比較結果に対して注記や寸法、コメントなどをデータ上に追記できる機能を備えることで、確認した差異の内容について関係者間でより円滑にコミュニケーションを取ることが可能となりました。
3. 3次元データの検証・修正におけるデータ処理速度を最大で約2倍に高速化
生産リードタイムの短縮とコスト削減が恒常的に求められる製造業にあって、3次元データの確認・編集・変換処理においても、速度の高速化は重要な課題の一つといえます。
ASFALIS EX6.0では、データ処理の並列化による3次元データの自動修正および書き出しの大幅な高速化を実現しました。
また、自動修正機能においては、従来型の「Powerful Healing」設定に加え、修正内容を最小限に抑えて高速化を優先させる「Minimal Healing」を新設しました。ユーザーは用途に応じて、データ修正の範囲と処理にかかる時間を考慮し、最適なデータ処理設定を行うことが可能となりました。
4. 対応するCADソフトのラインアップを拡充
ASFALISでは、ユーザーが用途に応じて専用のアダプターを導入することで、特定のCADソフトからのデータの読み込みやCADソフトそれぞれに適したデータの書き出しを行うことができます。
これまで「CATIA V5」「NX」「Pro/E」「CADmeister」の4つのCADソフトについては、「組込型」のアダプターとして各CADソフト専用のプラグインを提供していました。ASFALIS EX6.0ではこれに加え、4つのCADソフトに対応する「独立型」のアダプターを新たに追加しました。
新たに追加したアダプターでは、対象のCADソフト自体を持たない場合でもその3次元データを取り扱うことができます。なお、「NX」と「Pro/E」用の独立型アダプターはCADデータの読み込みのみ対応します。
5. Webアプリケーション「ATS」(ASFALIS TransServer)を新開発
ASFALIS EX6.0では、ASFALISのコンポーネントを使用するためのフロントエンド製品として、Webベースのアプリケーション「ASFALIS TransServer」を新たに販売します。
ASFALIS TransServerは、3次元データ変換・最適化システムを簡単に構築することができるWebアプリケーションです。複数のユーザーがWebブラウザーを通じて、ASFALISの高品質な3次元データの変換、簡略化、属性編集などの機能を利用することができます。また、ASFALIS TransServerでは利用者のアクセス権限を厳密に管理することができるため、セキュリティー面でも安心して運用することができます。さらに、管理者はASFALISの処理内容の優先順位を適宜変更することができ、その時々の状況に合わせた柔軟なシステム運用を行うことが可能です。