建設

3Dスキャナー計測と配管技術の職人技を組み合わせ新たな事業を創出

株式会社坂海工業所

クライアントである世界的な化学メーカーから設備保全や配管工事などを請け負う坂海工業所は、施工プロセスの効率化を目的として3DレーザースキャナーとInfiPointsを導入しました。

3次元計測と点群データ処理のノウハウに配管技術の職人技を組み合わせ、現在は新規クライアントの開拓にも積極的に取り組んでいます。

3Dスキャナーを用いた新規事業を展開する坂海工業所の西田成希社長(左)と中村龍治氏(右)


手作業による現場採寸の課題

坂海工業所は会社設立以来、60年以上にわたり工場の各種工事・メンテナンスを手掛けており、その業務は配管・設備工事からボイラー整備、ダクト製作・取り付け、大型機器の搬入・撤去など多岐にわたります。

それらの工事・施工準備の際、坂海工業所ではクライアントの負担を軽減するため、立ち入りの回数と滞在時間を極力少なくするよう努めています。しかし従来は、社員がメジャーを使って採寸しメモを取る方法しかなく、特に広い現場では立ち入り時間を短縮するのに限界がありました。また高所の採寸などは足場を組んで採寸する必要もあり、さらに時間と手間がかかるほか、場所によっては作業に大きな危険も伴います。重要な箇所はデジタルカメラで撮影することもありましたが、オフィスに戻ってから、採寸し切れていない箇所や確認できなかった点に気付くこともしばしば起こっていました。

3Dスキャナーを生かす点群ソフトを模索―InfiPointsとの出会い

そこで注目したのが3Dレーザースキャナーでした。坂海工業所はすぐにライカジオシステムズ社製の3Dレーザースキャナーの購入を決意し、その後、経済産業省が所管する生産性向上設備投資促進税制を活用して導入しました。

現場での3次元計測の様子

スキャナーでの3次元計測を始めたものの、坂海工業所はさっそく別の問題に直面しました。

点群データを業務で活用するためには、計測したデータにさまざまな処理を加える必要があります。現場はレーザースキャナーで簡単に撮影できるようになったとはいえ、付属のソフトではノイズの除去や配管のCADデータ化など、当初想定していた作業がなかなか実現できず、事務所に戻ってからのデータ加工の作業が大きな負担になっていました。

坂海工業所は、計測した大容量の点群データを適切に扱えるソフトウェアをリサーチし、たどり着いたのがInfiPointsでした。InfiPointsは計測データの合成やノイズ除去、さらに配管モデリングのもとになる円柱形状の抽出などを自動で実行する機能を備えており、人の判断が必要な箇所もマウスのクリック操作だけで行うことができます。坂海工業所はこれらの機能を用いることで3Dスキャナーをより効果的に活用できると評価し、InfiPointsの導入を決めました。

合成処理した点群データ。画面上で現場採寸を実行している

施工前後をシミュレーション

現在、坂海工業所は、計測データの合成やノイズ除去など基本的なデータ前処理をInfiPointsで行ったあと、解析機能も駆使して綿密な施工計画を立案しています。具体的には、どの配管を撤去し、どこに新規の配管をつなぎ合わせるのか、既設設備を撤去するとどの程度空間が生まれるのか、そこに新規設備は収まるのか、搬入経路に問題がないかなどを予め自社オフィスのPC上で検証します。

これらの情報を視覚的に確認することで、作業工程やそれにかかる時間をより高い精度で見積もることができるほか、施工内容や完成イメージをクライアントや自社の技術者と正確に共有できるため、施工後の手戻りの防止にもつながっています。

坂海工業所での打ち合わせの様子。3次元データで現場情報を共有している

顧客満足を追求した新技術への投資

坂海工業所が、業界他社に先駆けて3Dスキャナーや点群処理ソフトの導入を決意した背景には、西田社長の顧客満足を追求する強い思いがありました。

西田社長は、ベテラン技術者の経験と勘で仕事を進めていく方法では限界があり、クライアントの満足につながる安全かつ合理的な施工を安定的に提供していくためには、新しい技術を積極的に取り入れる必要があるとの考えを持っています。そしてレーザースキャナーとInfiPointsを利用した施工前のシミュレーションと具体的なイメージ共有の方法は、次世代の仕事の仕組みになると直観したと言います。

さらに、クライアントのニーズが多様化する中で、現場の最前線に立つ会社として常に最先端の技術を積極的に取り入れ、イノベーションを生み出していかなければ付加価値を生み出すことができないという強い信念が、3D計測とデータ活用への取り組みを加速させています。

3次元計測を新たな事業の柱に

この数十年間、大手企業にあっても基本的にはプラントメンテナンスの手法は変化していません。プラント以外の多様な業種で3Dスキャナーが活用され始め、さらにInfiPointsのような点群ソフトが提供されている現状から、坂海工業所はプラントエンジニアリング業界も今後大きく変わる可能性が高いと考えています。そのため、長年取引のある世界的な大手化学メーカーに対しても、前例に倣うことなく、3次元計測による新しい工事プロセスの実施を積極的に提案しているほか、3次元計測業務自体を自社の「プラントメンテナンス」「配管ユニット製作」に並ぶ新たなビジネスと位置付け、精力的に展開しています。

新規事業の拠点となる新オフィスも開設し、坂海工業所は現在、土木や住宅・ビルなど、これまで取引のなかった業界での新規案件の開拓にも積極的に取り組んでいます。

計測した点群データを坂海工業所がInfiPointsでCADモデル化した例

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