プラント設計

水インフラ施設における3D計測と点群活用

水ingグループ (アクアエンジニアリング株式会社)

グループ企業間の情報共有

水ingグループでは、上下水道やし尿・汚泥再生、産業水処理施設などさまざまな水処理施設の設計・施工・メンテナンス・オペレーション・薬品・事業運営などを行っています。プラントの設計から建設・メンテナンスを手掛ける水ingエンジニアリングと、施設の維持管理、運営などを手掛ける水ingAMが連携し、グループ全体で、プラント建設から事業運営まで対応できることを強みとしています」(水ingエンジニアリング 今堀真明氏)

「その中でアクアエンジニアリング(*)は、水ingグループ内での3D計測や、3Dデータを活用した設計業務を手掛けています。グループ全体で取り組むため必然的に関係する社員や業者も多く、情報を共有・活用し、さらには継承するための仕組みについて常に課題を抱えていました」(アクアエンジニアリング 渡邊尚幸氏)

水ingグループのビジネスコンセプト

コンカレントエンジニアリングのための点群活用

「このように分業化されている下水道事業においては、コンカレントエンジニアリングが今後の革新の鍵であると考えました。そして設計・施工プロセスの効率化には、点群データの活用が有効であると判断し、まずInfiPointsを導入しました。その後InfiPointsを活用した新しいプロセスの現場への適用を試行した結果、良い感触が得られました」(渡邊氏)

「その頃、国土交通省から『下水道BIM/CIM導入モデル事業』に採択された下水処理施設の増設案件を請け負うことになり、ここで点群活用を発展させ、施工計画や施工管理に本格的に取り組むことにしました」(今堀氏)

リアルな現場情報を元にした精度の高い設計

「通常、新築案件では既存の建物がないため、詳細かつリアルタイムでの現場情報はそこまで必要とされません。しかし、この案件は土建工事とプラント工事が分離発注であったため、私たちとしては土建工事の状況も逐次確認する必要がありました。そのため設計を行う前に、据え置き型スキャナーでの3D計測を行い、現場の正しい状況をつかむ工程は非常に有効でした。また土建工事側でも複数の業者がそれぞれに工事を進めていきます。そこで工事が進むたびにこまめに現場を計測し、最新の情報を各社に共有することで、施工時の手戻りを防ぐ取り組みを始めました」(水ingエンジニアリング 郡司敦氏)

「さらに、InfiPoints上で、他社がすでに施工した配管(点群)と当社がこれから施工する配管のCADデータを重ね合わせ配管の取り合い箇所を確認したり、干渉の有無をシミュレーションしたりすることで、設計精度自体の向上にも取り組みました。従来の手順や方法では、精度以前に、図面があっても実際にはまったく異なるルートで配管や配線が通されているために、その都度現場で加工して調整するのが当たり前でしたから、全体として相当な時間と手間の削減につながりました」(渡邊氏)

水処理施設を3D計測した点群データ

CADソフトで作成したCADモデル

点群とCADを合成したデータ
(アクアエンジニアリングが他の水ingグループ会社とともに手掛けた下水処理施設の例)

目視が不可能になる施設の3Dデータを将来に残す意味

「工事完了後にはドローンも活用し、あらためて現場の3D計測を行いました。お客さまが頻繁に現場に足を運ばれるのは大変ですので、その計測データを、InfiPointsのVR機能を使って見ていただきました。その結果お客さまからは『図面や写真だけではイメージができなかった施設の大きさや高さなどが実感できる』と大変好評でした」(渡邊氏)

「特に水槽部分については、一度施設が稼働し水を張ってしまうと、その後10年以上は目視での確認や、撮影・採寸が難しいケースがあります。稼働前にお客さまにしっかりと見ていただけたことは、今後の維持管理業務を円滑に進めるためにとても重要なことであったと思います。また私たちにとっても、施工当時の詳細な情報をデジタルデータとして残せることは、将来のメンテナンス計画の精度や効率性につながる大変価値のあることだと考えています。つまり、3D計測することで、目先の工事の効率化だけでなく将来世代にとってのかけがえのない財産を残すことにつながります。そうした長期的な取り組みをスタートできたことをとても誇りに感じています」(今堀氏)

ドローンオペレータの中溝氏(水ingエンジニアリング)と草野氏(アクアエンジニアリング)

点群データ活用で維持管理プロセスの効率化も

「これまではプラントの稼働後のことまであまり想定せずに設計することが多くありました。今後は新規設計時に、のちのちの設備維持管理のしやすさを見据えるように変わっていきたいと考えています。そのためには設備の維持管理業務や運営を行うフィールドエンジニア(現場技術者、オペレータ)の意見を参考にすることが大変重要です。水ingグループの水ingAMと連携し、彼らと点群データを用いた活発なコミュニケーションを図ることで、設計・施工フェーズを越えて、維持管理フェーズの効率化も実現できると考えています」(今堀氏)

「当社は水ingグループとしての内販業務でプラントの設計・施工・維持管理への点群データおよび3Dデータ活用に取り組み、外販業務ではストックマネジメント(点検・調査・改築・修繕計画)における3Dデータ活用を請け負っています。今後もプラントライフサイクルのあらゆる場面で、3Dデータを活用しながら貢献できる会社として、装備を充実していきたいと考えています」(渡邊氏)

オフィスで打ち合わせを行う中溝氏と草野氏

*アクアエンジニアリング株式会社は、2021年10月1日付で、親会社である水ing株式会社に吸収合併されました

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