建設

施工主の負担も減らす新しい仕事の進め方を確立―点群データを使ったコミュニケーションのメリット

MIRAIZ株式会社

MIRAIZは千葉県君津市を拠点として主に鉄鋼プラント用の機械設計業務を請け負っています。従来は手作業で現場を採寸し、施工主の意向を確認するために何パターンも図面を作成していました。

3DスキャナとInfiPointsを導入してからは、点群データを使って施工主と具体的で詳細な事前検討を行えるようになり、施工主と自社の双方が効率的に施工準備を進められる新しい仕事の進め方を確立しています。

設計事業グループマネージャー・石川哲也氏(右)と同グループ・塘之口雄佑氏

高温の炉の周りは採寸することさえできなかった

日本の産業界において長年重要な役割を担ってきた製鉄業のプラント。その安定稼働には、設備のメンテナンスとリニューアルを適切に実行できるプラントエンジニアリング会社の存在が不可欠です。MIRAIZもその中の一つで、1975年の会社設立以来、主に千葉県君津市の鉄鋼プラントにおけるメンテナンスを請け負っています。

プラントメンテナンスを行うためには、まず現場の正確な把握が不可欠です。建物の竣工時の図面が残されている場合でも、現場ではその後もさまざまな改修が施されているため、図面と実際の形状が大きく異なっていることが少なくありません。

従来は社員が二人組になって現場に赴き、一人が手に持ったメジャーで採寸し、もう一人が紙に手書きでメモをしたりスケッチを描いたりする方法が採られていました。

「エンジニアリングはやはり現場が第一という信念を持っています。自分の目で見て、自分の手で現場を測ることは基本中の基本。私も30年来この方法で仕事をしてきました」(石川氏)

しかし、こうした現場の事前確認が許されるのは2,3日がほとんどで、設備や配管が入り組んだ広い現場のすべてをこの期間に把握するのは至難の業でした。

「お客さまは綿密な生産計画を立てられています。設備の休止期間もぎりぎりで設定されているため、私たちは絶対にその期間内に必要な箇所の採寸を終える必要があります。社員はどの現場でも高い集中力を持って精一杯調査に当たっていますが、それでも、例えば作業車や足場の設置が間に合わないような場合には高所の正確な採寸は諦めることもあります」(石川氏)

また製鉄プラントならではの現場の厳しさもあると言います。

「一度現場に入れば、私たちは作業着をススで真っ黒にしながら懸命に確認作業を行います。そんな中ですが実は汗が流れません。製鉄プラントの内部は気温が非常に高く、出た汗もすぐに蒸発してしまうためです。また高温な設備には近づくこともできず、手作業での採寸は不可能でした」(塘之口氏)

高所や高温設備の周辺は、作業員が離れた位置から目算する以外に方法はありませんでした。

初めての3D計測でさっそく感じた手ごたえ

2016年、MIRAIZは取引先から初めて3Dスキャナの情報を得て、すぐに実用検討を始めました。「すでに3Dスキャナを導入していた取引先から『一度機材を貸すから現場で使ってみては?』と勧められました。正直、それがどのようなもので現場がどう改善されるのかイメージがつきませんでしたが、何か効率化が図られるならと、さっそくお借りすることにしました」(石川氏)

せっかくの機会を有効活用しようと、MIRAIZは点群ソフトも同時に試行することにしました。そして業界でも評判のよいエリジオンのInfiPointsのトライアルを開始しました。

「ゼネコンやサブコンの大手企業での導入実績があるInfiPointsに注目しました。いくつものソフトを機能ごとに使い分けるような手法は私たちにとっては現実的に難しく、点群の前処理から成果物作成までをワンストップで提供しているという点でも、InfiPointsは私たちのニーズに合っていました」(塘之口氏)

まず取り組んだのは、人力では難しい天井位置の梁の採寸とその周辺状況の確認でした。

「いざ計測してみると、3DスキャナもInfiPointsもどちらも予想より操作が易しく、自分たちでも使えるなという印象が持てました。また、従来目視で行っていた採寸に比べ精度は驚くほど高く、まったく実務に問題がありませんでした」(塘之口氏)

「高所はもちろんですが、高温の危険な場所に近づく必要がなくなり、この方法であれば社員の安全を確保できると感動しました。空調の効きづらい空間で長時間作業するのも大変です。3Dスキャナでの計測は現場採寸ほど体力も必要ないため、体調管理もしやすくなると感じました」(石川氏)

誰でも3Dを見られるInfiPointsの閲覧用ファイル

その後、MIRAIZは3DスキャナとInfiPointsを正式に導入し現場での活用を始めました。InfiPointsでの点群活用の中で特にキーになる機能は「閲覧用ファイル出力」機能でした。これはInfiPointsのライセンスや特別なアプリケーションのインストールをせずに、どのPCでもInfiPointsで加工した点群データを閲覧したり編集したりすることのできる機能です。

MIRAIZは施工主との工事内容の事前検討時に、この機能を積極的に活用しています。

お客さまとのコミュニケーションに使用する点群データをInfiPointsで確認する様子


MIRAIZが通常コンタクトするのは施工主の設計部門の担当者です。設計部門との事前確認ができた場合でも、その後の設備施工部門による確認で計画が振り出しに戻ることもしばしば起きていました。

「いつもは現場確認をした後オフィスに戻り、メモを見ながらお客さまとの打ち合わせ用の図面を数種類作っていました。設計部門のお客さまも私たちが作った何種類もの図面をもとに社内用の確認資料をたくさん作られ、設備施工部門をはじめとした社内の関係者との調整に臨まれるのですが、いつも大変苦労されているのを工事のたびに拝見していました。しかしInfiPointsを導入してからは、まず閲覧用ファイルをお客さまにお渡しし、点群データをもとにコミュニケーションするようにしました。こうすることでお客さまも認識されていなかった最適な答えを一緒に短時間で見つけられ、その結果、今では図面は一種類だけ作成すればよく、効率的な仕事の進め方を実現しています」(塘之口氏)

「私たちが計測したデータを閲覧用ファイルとしてお客さまに提供することで、設計部門のお客さまは、図面を読むのに不慣れな施工部門の担当者とも早い段階で正確に事前検討をすることができるため、お客さまの手間も軽減され、効率的に仕事を進められているようです」(石川氏)

大型産業用設備の更新工事での工期短縮の例

顧客にとってなくてはならないパートナーになる

こうしてプラントメンテナンス業務の効率化を実現したMIRAIZは、製作工場での機械設備の製造でも3Dスキャナと点群データを活用する検討を始めています。

「現在、中国・大連でプラント用設備の製造を行っています。その検査工程では、お客さまと担当者が現地に行って実物と図面の差異を確認しています。もし現物を計測しそのデータを日本で確認する方法が取り入れられれば、お客さまにわざわざ移動していただく必要がなくなりますし、例えばベルトコンベアの座面の平行など人の手による計測では難しいより細かい部分の誤差の確認が効率よくできるようになります」(石川氏)

MIRAIZの中国での製品検査風景。
こうした手動採寸と目視による検査方法から3D計測による方法への転換を検討している

また、顧客のプラントを計測し詳細なデータを自社で管理できることは、中長期的な経営戦略においても非常に重要であると言います。

「私たちはただ単純に計測しているわけではありません。長年の経験とノウハウをもとに設備施工時にポイントとなる点を抑えながら、必要な部分を確実にデータ化しています。またその時々のお客さまの現場の様子を品質の高い3Dデータで把握できることは、次のリニューアル工事の際にどこよりも価値のある方法をお客さまにご提案できることにつながります。私たちはすでにお付き合いのあるお客さまにとって、なくてはならないパートナーであり続けたいと考えています」(石川氏)

MIRAIZは、3Dデータを使った新しいエンジニアリング手法を導入することで単に業務フローの効率化を図っただけでなく、既存顧客との永続的な取り引きを実現するための基盤を着実に整備しています。

<補足> InfiPointsの閲覧用ファイル出力機能とは

現場の点群データを他部署や取引先に配布するための閲覧用ファイルを出力することができる機能です。データを受け取ると、専用のビューアーなどのプログラムをインストールすることなく、どのPCでも点群データを閲覧することができます。さらに閲覧用ファイルの中で寸法を計測したり、断面を切って現場を確認したりすることができます。

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