マイギは京都府舞鶴市に本社を構え、さまざまなクライアントからプラント建設や保守工事を請け負う事業を展開しています。海外の化学プラントや関⻄空港の給油基地の建設等の実績を持つほか、海上自衛隊の護衛艦内機器のメンテナンスを担うなどその業務は多岐に渡ります。
2018 年には3DレーザースキャナーとInfiPointsを導入し、現在、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)が保有する施設の改修工事において新しい方法でのプランニングと施工を進めています。
JAEAでの研究内容の高度化に伴って実験施設の増強が必要になった際、マイギが主にメンテナンスを任されていた陽子加速器施設の冷却設備の現況をいかに正確に、そして効率的に把握するかが問題となりました。従来は大掛かりな足場を現場に組み、後工程で寸法が必要となりそうな箇所をすべて手作業で採寸していましたが、その方法では顧客が希望する期間でプランニングすることが到底できない状況でした。
他のプラントエンジニアリング会社が3Dレーザースキャナーを活用して業務を効率化させているとの情報を得たマイギは、すぐにスキャナーと点群処理ソフトの調査を開始しました。スキャナーと同時にいくつかのソフトを検討した結果、スキャナーやモデリングに使うCADソフトとの相性の良さからInfiPointsを選定しました。
早速現場を3Dスキャナーで計測しInfiPointsでデータ処理を行うと、従来は足場がなければ詳細を確認できなかった高所もまるでその場にいるかのように確認することができ、採寸にも時間がかからないため、現場調査にかかる工数を通常のおよそ10 分の1 に抑えることができました。
また3Dスキャナーの死角になった部分はそこだけをスケールを使って⼿測し情報を補うなど、従来手法と新手法を織り交ぜることで正確なプランニングを効率的に行うプロセスを確立しました。
マイギでは計測した点群データを単にPCで閲覧するだけでなく、点群をもとに3D CADモデルを作成しています。
「当社では、点群を活用するにあたり点群データ処理フローシートを作成しました。データ活用にはさまざまなフェーズがあり、各フェーズでソフトを使い分けています。お客さまから求められる最終成果物の多くは2D図面ですが、まずは点群データから3Dモデルを起こすことから始めます。というのも3Dモデルがあればその後柔軟に2D図面を作ることができるからです。モデリング以外にも現場を3Dデータ化するメリットは大きく、例えばInfiPointsの干渉チェック機能を活用することで設備の搬入出の工程を事前にシミュレーションし、工事の⼿戻りを防ぐことができます。InfiPointsにはそうした工事プロセスを効率化する機能が充実しています」(マイギ 専務取締役・上羽裕之氏)
「InfiPointsは点群からの平面や配管の自動抽出機能が非常に優れていますが、鋼材モデリング機能が特に使いやすく多用しています。一方で電気設備などは点群からモデルを生成することが難しい面があります。これに関しては、すでにCADデータがある既製品が用いられることが多いためそれを点群上に配置することで対応しています。InfiPointsはこうした点群とCADの併用がしやすく、当初は点群からすべての設備をモデリングするには相当時間がかかるのではと考えていましたが、充実したモデリング機能やその他のきめ細かい機能のおかげで想定していたよりも時間をかけずに、詳細なモデル作成ができています」(上羽氏)
また上羽氏によれば、従来は現場での採寸漏れがあった箇所を設計者のイメージでモデリングすることがありましたが、そうした思い込みが原因で生じるデータと実際との乖離を排除できることも、点群データ活用の効果として実感していると言います。
マイギは、点群から作成したCADモデルと新規に設置する設備のCADモデルをInfiPointsで合成し、それを閲覧用ファイルとして出力し顧客に共有しています。
「InfiPointsの閲覧用ファイルは専用ソフトのインストールが不要なため、お客さまが簡単にデータを閲覧して施工後のイメージを確認できる上に、採寸や断面表示切替まで行うことができ大変便利です。お客さまからもこうした新しい情報提供の仕方に高い評価をいただいています」(上羽氏)
顧客とのコミュニケーションに閲覧用ファイルを活用し、合意形成を従来に比べ簡単に行えるようになったマイギは、InfiPointsに実装されているVR機能を活用することで今後さらに顧客との交渉や関係会社との協業がしやすくなると期待しています。さらに工事以外の場面での3Dデータ活用も視野に入れています。
「お客さまであるJAEAの施設には一般の方が見学に来られます。ところが施設の稼働中は設備の近くに行くことができず、十分に施設のことを理解してもらえないことがあるようです。そのような場合にも事前に取得した点群データを活用してバーチャルツアーを体験してもらえば、最先端の技術への理解を来訪者に深めてもらえるのではないかと考えています」(上羽氏)